音楽という芸術を生み出してきた偉大なクラシック音楽家たち。
彼らはクラシック音楽に対する思想を、数々の「言葉」として残しています。
今回は、そんなクラシック音楽家たちが残した名言にスポットをあててみたいと思います。
音楽の世界に関する名言はもちろん、私たちの人生において役立ちそうな言葉も厳選して紹介しますので、ぜひお気に入りのフレーズを探してみてくださいね。
クラシックの音楽家たちの思想や名言を厳選してご紹介します!
バロック・古典派時代のクラシック音楽家の名言
クラシック音楽のいしずえとなる基本が完成した時代。
今からおよそ200〜300年前の音楽家たちの音楽に対する思いは、いったいどのようなものだったのでしょうか?
バッハ
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)ドイツの作曲家・オルガニスト
「音楽だけが世界語であり翻訳される必要がない。そこにおいては魂が魂に働きかける」
「音楽の父」とも呼ばれるバッハの言葉です。
言葉が通じなくても、音楽は言葉や国を超越し、わたしたちの心に伝わってきます。
例えばそれは楽しい音楽だったり、喜びの音楽だったり、悲しい音楽だったり。
クラシック音楽のみならず、歌詞の意味がわからない海外の音楽を聴いても「いい曲だな」と思えることってありますよね。
本当にその通りだなと思える名言だと思います。
ハイドン
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)オーストリアの作曲家
「自由な芸術と、作曲という美の意識は、技巧の束縛を許しません。心と魂は、自由でなければならないのです」
「交響曲の父」と呼ばれるハイドンは、1000曲もの作品を作ったと言われています。
しかしハイドンは、クラシック音楽形式の到達点と言われる「ソナタ形式」を確立した人物でもあります。
規則よりも芸術の自由性、独創性が重要であるという主張は、なんだか少し矛盾しているような気もしますよね。
しかし、ハイドンはそんな形式的な安心感を与えつつも、その中で自由な表現をとったり、ソナタ形式にとらわれない楽曲も数多く残しています。
膨大な楽曲を作ってきた彼の口から「心と魂は自由でなければならない」という言葉が語られるのは、なんだかとても説得力があるような気がしませんか?
モーツァルト
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)オーストリアの作曲家
「音楽はどんなに恐ろしい場面でも決して耳を汚さず、やはり楽しませてくれるもの、つまり、いつまでも音楽でありつづけなければなりません」
モーツァルトといえば「明るい」「楽しい」そんなイメージがありませんか?
実際に彼の交響曲は長調(明るいイメージの曲)ばかりで、短調(暗いイメージの曲)はほんの2曲ほどしか作られていません。
モーツァルトの短調の曲もドラマチックで素晴らしいものですが、長調の曲が多いのは彼の中にいつもこの言葉があったからではないでしょうか。
音楽は、楽しむもの。
常に聴衆を楽しませ、満足させることを考えて作曲をしていたというモーツァルトの音楽観がうかがえます。
ベートーヴェン
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)ドイツの作曲家・ピアニスト
「小さな欠点があってもそこで演奏をとめさせず、終わりまで弾いてから欠点について指摘したまえ。この方法が『音楽家』を作り上げるのだ」
これは、ベートーヴェンが弟子のチェルニーに向けた言葉です。
現代の日本でも、ピアノ教則本の「チェルニー」は有名ですよね。
彼(チェルニー)は、当時からウィーン音楽院で教育者として名をはせた人物でした。
そんなチェルニーにベートーヴェンは、他にも「君の弟子が正しい指の使い方と正確なリズムを会得し、間違わずに弾けるようになってから、演奏法に注意を払いたまえ」とも述べています。
途中で間違ったりつまずいたりしても、そこで止めずにとりあえず最後まで終わらせてみること。
この教育法は、音楽を学ぶときはもちろんですが、他の何かを学んだり習得したりするときにとても大事なことだと思います。
ロマン派のクラシック音楽家の名言
クラシック音楽がもっとも花開いたとき、それがロマン派の時代です。
ここでは、そんなロマン派を生き抜いた音楽家たちの言葉を紹介しますね。
ショパン
フレデリック・フランソワ・ショパン(1810-1849)ポーランドの作曲家・ピアニスト
「偉大なる作曲家になるためには豊富な経験が必要とされます。そのためには他人の作品を聴くだけではなく、特に自分自身の作品をきびしく検討しなければなりません」
数々の素晴らしい楽曲を世に送り出した「ピアノの詩人」と呼ばれるショパンは、さまざまなピアノの表現様式を確立し、彼が生涯に残したのはほとんどがピアノのための作品です。
また、ポーランドの民族音楽からマズルカやポロネーズへの興味を深めたと言われており、インスピレーションを受けるために、さまざまな経験から情報を収集、整理、分析していたのではないかと思われます。
勤勉で完璧主義者だったのでは?と言われるショパン。
ロマンティック、リリカル、そんなイメージがあるショパンの楽曲ですが、それらの言葉とは裏腹に、とてもストイックに曲を作っていたのかもしれませんね。
シューマン
ロベルト・アレクサンダー・シューマン(1810−1856)ドイツの作曲家
「人間の心の深奥へ光を送ること。これが芸術家の使命である!」
あなたが「すばらしい!」と思うものに出会ったとき、心が満たされた気持ちになったことはありませんか?
そういった作品を作ることこそが、芸術家の使命だというシューマンの言葉です。
決して自分本位ではなく、常に聴衆のことを考えながら曲を作っていたのだなとわかる名言だと思います。
音楽家だけでなく「なにかを創造する」クリエイター全般に響く言葉ではないでしょうか。
ブラームス
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)ドイツの作曲家
「絶えずベートーヴェンのような巨人がうしろからのっしのっしと歩いてくるのが聞こえる。その気持ちがどんなものか、きみには検討もつかないだろう」
ロマン派以降の多くの作曲家たちは、偉大なるベートーヴェンに追いつこうと、必死にもがきながら創作をしていました。
当時の世の中も「第二のベートーヴェン」を求めており、それはブラームスにとっても「優れた曲を書かなくては」と相当なプレッシャーになっていたようです。
目標でもあるベートーヴェンの作曲手法を徹底的に研究したり、書きかけた曲を破棄したり……。
そんな苦悩を乗りこえ、20年以上かけて完成させたブラームスの「交響曲第一番」は「ベートーヴェンの第十番交響曲」と絶賛されました。
ベートーヴェンの交響曲は第九番までしかないので、彼が作ったかのように素晴らしい!という意味ですね。
優れた音楽家たちは天才というイメージがあるかもしれませんが、努力と経験の積み重ねにより偉人と呼ばれるようになった人の方が多いのかもしれません。
チャイコフスキー
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)ロシアの作曲家
「インスピレーションにかきたてられた芸術家の心の奥底から流れ出た音楽だけが人の心を打ち、感銘や感動を与えることができるのです」
ロシアの作曲家チャイコフスキー。
彼もまた天才と言われる音楽家のひとりです。
天才だからといって、インスピレーションが無限にわいてくるかといえばそうではなかったようで「インスピレーションを待っていたら何も書けない」とも述べています。
そして、その後に「毎朝必ず作曲をする。そうすると神様がインスピレーションを送ってくれる」と続けています。
「自ら気分を高めることができた者には必ずインスピレーションが現れます」とも。
実際に行動にうつすことで、ひらめきを得られるのだということですね。
チャイコフスキーが天才音楽家だったことは確かですが、彼なりの努力があった上で、素晴らしい楽曲たちが生まれてきたのだなとわかる言葉です。
近現代のクラシック音楽家の名言
私たちが生きる今より、ほんの少し前の時代。
そんな時代の音楽家の言葉を厳選してみました。
ドビュッシー
クロード・アシュル・ドビュッシー(1862-1918)フランスの作曲家
「音楽はその本質からして、伝統的な固定した形式にはめこまれるようなものではない、との確信をますます強めています。それは色彩とリズムから作り上げられるのです」
形式にとらわれず、ほのめかすような控えめな表現を特徴とする印象主義。
その印象派を代表する作曲家ドビュッシーらしい言葉です。
彼は、新しい感性による音の響き・音色を使い、まるで絵画のような音楽を創造していきました。
独特な和音や旋律、他にはない斬新な響き。
そんなドビュッシーの音楽に影響を受けた作曲家は少なくないと言われています。
リヒャルト・シュトラウス
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)ドイツの作曲家・指揮者
「指揮をして汗を流してはいけない。熱くなるのは聴衆だけでいい」
リヒャルト・シュトラウスは、オペラなど数多くの傑作を世に出した作曲家です。
その一方で、トップクラスの指揮者でもあった彼は上記のような言葉を残しました。
また彼は「指揮者が歌い手の歌詞をわかっていてもだめだ。すでにその歌詞を知っているのだから。(その場ではじめて耳にする)聴衆が努力なしに歌詞をたどれるのでなければならない」とも述べています。
常に聴き手の気持ちを考えながら指揮をしたり、作曲していたのだと想像できる言葉ですよね。
ラヴェル
モーリス・ラヴェル(1875-1937)フランスの作曲家
「いつも良いものが書けるとは限らない。しかも捨てたもののほうを惜しかったと思うことさえある」
ラヴェルは、納得のいかない作品を暖炉で燃やしていました。
これは弟子のマニュエル・ロザンタールへの言葉で「音楽的には良くても、あまり良いと思われないこともあるし、自分ではすばらしいと思っていても、燃やしたほうがましなくらいひどいこともよくある」とも言っていたそうです。
何かを作り出している人ならば、似たような感情を持ったことがあるのではないでしょうか。
そして「作曲をするのはもううんざりだというくらいまでならなくては」とも。
数多くの経験を経て、やっとの思いで素晴らしい一曲を作り出していたのだなということがよくわかる一文です。
ストラヴィンスキー
イーゴリ・フョードロヴィチ・ストラヴィンスキー(1882-1971)ロシアの作曲家
「世間の人は創作をはじめるためにはまずインスピレーションを持っていなければならないと思っている。それは間違いだ。インスピレーションは努力によって、まさに仕事をすることによってのみ動き出すことができるからだ」
これは、上記で紹介したチャイコフスキーの言葉と通ずるものがあると思います。
ストラヴィンスキーの言うように、創作に優れている人は、数多くのインスピレーションを持っているというイメージがあります。
中には、そうした天才肌と言われる人も確かにいるのでしょう。
しかし、多くの創作者はそうではなく、実際に仕事に取り掛かり、毎日の努力だったり経験だったりを積み重ねた上でインスピレーションを手に入れているのだということを述べています。
もし、今あなたが何かを作り出したい、成功させたいと思っているのなら、ひらめきを待つよりも、まずは行動に移してみることが大切なのかもしれません。
【番外】クラシック演奏家の名言
最後に、クラシック音楽の演奏家たちの言葉を紹介します。
演奏することを専門にした彼らの言葉は、音楽や楽器など芸術を勉強している方に特に響くのではないでしょうか。
フランチェスコ・ジェミニアーニ
フランチェスコ・ジェミニアーニ(1687-1762)イタリアのヴァイオリニスト・作曲家
「作曲者と共に演奏者にも聴衆に感動を与えようという希望があるが、まず自分自身が感動しなければならない」
自分自身が冷めている場合と、心を揺り動かされて感動している場合。
どちらが聴衆に情熱を届けやすいかは想像に難くないですよね。
感動やすばらしい、好きだという感情は、大きな熱量となって聴衆に伝わるのではないかと思います。
ヴィルヘルム・バックハウス
ヴィルヘルム・バックハウス(1884-1969)ドイツのピアニスト
「なにを練習したかではなく、いかに練習したかが重要である。練習材料にこだわるよりも、練習の正確さに意を用いるべきである」
難易度の高い練習をするのも確かに大切なことですが、自分から見てかんたんと思えるレベルのものでも、ただ弾き流すのではなく、丁寧に正確に練習することが技術力の向上につながっていくのかもしれません。
当然のことかもしれませんが、改めて気づかせてくれる一文だと思います。
ウラディミール・ホロヴィッツ
ウラディミール・ホロヴィッツ(1903-1989)ウクライナのピアニスト
「完全であること自体が、不完全なのだ」
音楽などの芸術には「完全」は存在しないように思います。
自分が完全だと思ったものでも、他人にとっては不完全であったり、その逆も同様であるからです。
また、完全完璧なものよりも、不完全さが美しく感じるものも多くありますよね。
この言葉にはいろいろな解釈がありますが、自分なりに意味を考えてみるのも良いかもしれません。
ミシェル・コルボ
ミシェル・コルボ(1934-2021)スイスの指揮者
「作曲家が曲を書こうと思った『最初の感動』に近づきたい」
同じ曲でも指揮者によって違う曲のように聴こえる。
オーケストラ曲ではよくあることです。
指揮者は、作曲家の思いを紐解き独自の解釈で音楽を再現しています。
クラシック音楽の作曲家たちが残した譜面や言葉から、その曲に込めた思いをさらに私たち聴衆に届けてくれようとしていることがよくわかる言葉だと思います。
クラシック音楽家の残した力強い名言集まとめ
いかがでしたか?
今回は、作曲家や演奏家といった音楽家たちの言葉を厳選して紹介しました。
天才と呼ばれる偉人たちでも、多くの努力と経験から曲を生み出したり演奏していたことが良くわかるのではないかと思います。
何かにつまずいたりした時、ぜひ彼らの言葉を思い出し、一歩を踏み出すきっかけにしてみてくださいね!