クラシック音楽の形式っていったい何のこと?
音楽には「形式」があるのを知っていますか?
実は、クラシック音楽だけでなく、普段耳にするJ-POPなどにも形式があるんですよ。
なんとなくでも音楽形式を知っておくと、楽曲に対する理解がより深まります。
また、音楽形式を知ることは、良い演奏・作曲をするために必要不可欠です。
今回は、そんなクラシック音楽の形式について、わかりやすく解説していきます。
クラシック音楽の形式ってなんだろう?
クラシック音楽の形式ってなんなのでしょう?
「形式」という言葉を聞いて、お堅くて少し難しそうだな……と感じるかもしれません。
ひとつの知識として覚えておく程度でも良いので、ぜひ肩の力を抜いて読み進めてみてくださいね。
楽式といわれる曲の構成のこと
実は、音楽には「すてきだな」「美しいな」と感じさせる枠組みが決まっているのです。
いわば、曲を書くときの設計図のようなものです。
クラシックの作曲家たちは、その枠組みに基いて曲を作り上げてきました。
それらの枠組みのことを「形式」と言います。
また「音楽の形式」ということで「楽式」とも呼ばれています。
曲を書くときの設計図のことを「楽式」とも呼ぶ
知っておくと理解が深まる!
形式を知っておくと、曲の構成がわかり、分析・解釈するための力が身につきます。
音楽をただ聴き流すだけでも全然構いませんが「この曲のクライマックスはここかな」「このメロディはこの後も出てくるのかな」など考えながら楽曲を聴くのもまた楽しいものです。
他にも、楽器を演奏したり歌ったりする場合、音楽形式を理解しているかによって演奏の深みや説得力に差が出てきたりも。
そして、形式を学ぶことは、作曲をするときに避けては通れない道といって良いでしょう。
基本的な形式を使ってみたり、さらに応用して作品に生かしてみたり。
また、クラシック音楽ほど厳格ではありませんが、ポップスやジャズなども大体の曲が音楽形式に当てはめられて作曲されています。
作曲に興味がある人は、ぜひ身につけてほしい知識です。
クラシック音楽の【形式】基本要素について
音楽形式の種類について説明する前に、基本的なところからはじめましょう。
ここではまず、音楽形式を作っている基本要素について見ていきます。
曲の最小単位「モチーフ」
曲の最小単位のことを「モチーフ」または「動機」といいます。
モチーフは「音の高さ」「リズム」そして「拍子」の3つの要素からできています。
音がひとつ鳴っただけでは、音楽と言い難いですよね。
そこで「ドレミ」「ミレド」といったふうに音を上げたり下げたりすることで「音の高さ」を生み出します。
それに「リズム」をつけ、さらに「拍子」を絡ませたものが「モチーフ」となります。
一般的にモチーフは、2小節以上で作られています。

なぜかというと「拍子」を確定させるためには、1小節では不可能であり、最低でも2小節以上必要だからです。
(TIPS)小節とは
楽譜が読みやすいように、五線譜を線で区切り細かく分けた単位のこと。
拍子を決めると、ひとつの小節の中に入れられる音符の数が決まります。
モチーフがふたつ連なると「小楽節」
モチーフ(動機)がふたつ連なったものを「小楽節」または「楽句」といいます。
モチーフは、通常2小節で作られるものでしたね。
ですので、小楽節は一般的に4小節になるというわけです。

小楽節には、大体以下のようなパターンがあります。
- 前半のモチーフと後半のモチーフが同じ(a-a)
- 前半のモチーフと後半のモチーフが似ている(a-a’)
- 前半のモチーフと後半のモチーフが違う(a-b)
小楽節は、小文字のアルファベットで表記し、似た旋律の場合にはダッシュ(’)をつけて表します。
小楽節がふたつ連なると「大楽節」
さらに、小楽節をふたつ組み合わせると「大楽節」の出来上がりです。
小楽節(4小節)がふたつですから、通常8小節のものを指します。
童謡などの短い曲は、この大楽節だけでできているものも多くあるんですよ。
大楽節ひとつでまとまった雰囲気に感じられるものになっているので、ぜひ意識して聴いてみてくださいね。
また、大楽節が複数ある場合、大文字のアルファベットで表します。(A-Bなど)

クラシック音楽で使われる形式の種類
音楽形式の基本要素に触れてみたところで、早速形式について見ていきましょう!
どんなに大規模な楽曲でも、小さな形式の積み重ねでできていることを知れば、クラシック音楽をより楽しく聴くことができますよ。
クラシック音楽だけでない、形式のおはなし
クラシック音楽ではなく、普段耳にするJ-POPにも形式が存在しています。
「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→サビ」などなど……。
サビからはじまる曲もありますよね。
これらも立派な音楽形式のひとつと言えるでしょう。
一部形式
音楽形式の中で、もっともシンプルな形式です。
基本要素で「大楽節」について説明しましたが、一部形式はその「大楽節のみ」でできている形式のことを言います。
童謡や民謡などでよく使われる形式で、わかりやすく耳に残りやすいという特徴を持っています。
どんなに小さな曲であっても山場(クライマックス)があり、通常後半に設定されていることが多いようです。
一部形式の主な楽曲
童謡「春が来た」「赤とんぼ」「ロンドン橋落ちた」など
二部形式
二部形式は、一部形式の倍の長さ=ふたつの大楽節からできています。

前半の大楽節と後半の大楽節に分けられるということですね。
後半の大楽節の冒頭で新しい要素が登場し、最後の小楽節で前半の要素が再現されるという方法が多く見られます。(a-a’-b-a’型)
他にも、新しく登場した要素に関連したメロディーで終わる形もあります。(a-a’-b-b’型)
もちろん、これ以外のパターンも存在しますが、上記ふたつのパターンが主流と言えるでしょう。
二部形式の主な楽曲
「花」「ちょうちょう」「荒城の月」など
三部形式
音楽形式の中でもっともポピュラーと言えるのがこの三部形式でしょう。
三部形式とは、主に3つの大楽節からなる形式のことを言います。
「A-B-C」など3つの大楽節がすべて違うパターンもありますが、「A-B-A」(または「A-B-A’」)のように、
最初の大楽節を再び最後に持ってくるパターンが主流になっています。
三部形式の主な楽曲
「きらきら星」「見よ勇者は帰る」など
ソナタ形式
見かけは三部形式に似ていますが、西洋音楽の到達点であり、音楽形式の中でもっとも優れた形式であるとされているのがソナタ形式です。
それぞれ「提示部」「展開部」「再現部」の3エリアに分かれています。
山場は主に「展開部」にあり、演奏をする上でも難しいとされている部分なんですよ。
ハイドンが確立、モーツァルトが継承し、ベートーヴェンが完成させた形式と言われています。
ベートーヴェンの有名な交響曲「運命」の第一楽章にこのソナタ形式が使われています。

「ソナタ形式」と「ソナタ」は別物
「ソナタ」という言葉は、ピアノやヴァイオリンなど楽器を習ったことのある人ならば、聞き覚えがあるかもしれませんね。
しかし、ここでいう「ソナタ形式」と「ソナタ」は意味が異なります。
「ソナタ(奏名曲)」とは、もともと「楽器で演奏する曲(器楽曲)」という意味で、それが時代を経て「複数楽章からできている器楽曲」に変化していきました。
そのソナタの第一楽章に「ソナタ形式」の曲が主に用いられていることから、そう呼ばれるようになったのです。
ふたつのテーマがある「提示部」
では、最初の「提示部」から解説していきますね。
提示部は「第一主題(A)」と「第二主題(B)」というふたつの主題があることが前提になっています。
それぞれの主題は、印象の強い特徴的なモチーフが使用されますが、決して似ているものは使われず、対照的なメロディーが置かれます。
そして、このふたつの主題の「調性」についても、秘密が隠されているんですよ。
少し専門的な話になってしまいますが、第一主題が長調(明るいイメージの調)の場合、第二主題は「属調」に転調されます。
属調とは「音階の5番目の音」であり、例えば第一主題が「ハ長調(主音ド)」の場合、「ド・レ・ミ・ファ・ソ」と数えて、第二主題は「ト長調(主音ソ)」になるのです。
また、第一主題が短調(暗いイメージの調)の場合は、第二主題が「平行調」に転調されます。
平行調とは、同じ調号を持つ短調と長調のことを言い、例えば第一主題が「ハ短調」の場合、第二主題は同じフラットが3つついた「変ホ長調」になるというわけです。
これらが意味することは、第一主題が長調でも短調の曲でも、第二主題は必ず長調になるということです。

上記例に当てはまらない例外的な曲もありますが、
自由に作られたような音楽に聴こえても、実はこんな決まりがあったなんて驚きませんか?
(TIPS)「序奏」
大曲の場合、この提示部の前に「序奏」が入る場合があります。
提示部を変形させた「展開部」
続く「展開部」は、提示部の第一主題と第二主題のモチーフを多彩に変形させてアレンジするエリアになります。
展開のルールは定められていないので、ここでどれだけアレンジできるか作曲家の力量が問われる部分といっても良いでしょう。
とても技巧的な部分でもあるので、聴きどころもたくさんありますし、演奏家の腕の見せ所でもあります。
提示部を少し変えた状態で演奏する「再現部」
展開部が終わると「再現部」に移ります。
再現部とは、文字通り第一主題と第二主題を再度演奏するエリアのこと。
しかし、完全に同じというわけではなく「ほぼ原型に近い状態」で再現されます。
第一主題は同じなのですが、第二主題は曲をきれいに終わらせていくために、提示部とは違う調で演奏されるというわけです。
違う調といってもやはり決まりがあり、長調の場合は主調、短調の場合は同主調で再現されます。
同主調とは、同じ主音(音階の最初の音が同じ)からはじまる長調と短調の組み合わせのことを言います。
ハ短調の同主調はハ長調、変ロ短調の同主調は変ロ長調になるというわけですね。
(TIPS)「結尾部(コーダ)」
基本的にソナタ形式は上記のように大きく3つに分けられますが、最後にコーダと呼ばれる「結尾部」が置かれることもあります。
曲を終わらせるための後奏部分になり、まさに楽曲のクライマックスと呼ぶにふさわしいエリアなんですよ。
ロンド形式
ロンドとは「旋回」を意味する言葉で、特定の旋律をぐるぐると繰り返す形式のことを言います。
異なるメロディーを間にはさみながら、同じ主題を同じ調で何度も繰り返しながら演奏が進んでいくんですよ。
ロンド形式は、時代によって古典式と近代式の2種類があり、さらに近代式は大ロンド形式・小ロンド形式の2種類に分けられています。
古典式とは、バロック時代から古典派時代の初期頃まで使われていた古いロンド形式のこと。
しかし、古典派時代の中頃に近代式へと発展・交代し、それ以降は近代式が主流になりました。
ですので「ロンド形式」と言えば、大ロンド形式と、それを縮小した小ロンド形式を指すのが一般的です。

ちなみに、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」は大ロンド形式、ベートーヴェンの「エリーゼのために」は小ロンド形式で作られているんですよ。
リトルネッロ形式
ロンド形式に似ていますが、ロンドの場合、主題が毎回同じ調(主調)だったのに対し、リトルネッロ形式は最初と最後の主題以外は転調されて演奏されます。
またリトルネッロ形式を用いた協奏曲では、主題を奏でる合奏群と、独奏群が交互に演奏されながら進んでいくという特徴も。

ヴィヴァルディの「春」が、このリトルネッロ形式で作られています。
変奏曲形式
最後に変奏曲形式を紹介しますね。
変奏曲形式は、主題を少しずつ変化させて発展していく形式です。
主題を次々にアレンジして演奏(変奏)していくため、主題は基本的にシンプルで覚えやすいものに設定されている場合がほとんどです。
変奏回数に制限はなく、曲の最初で提示された主題を第一変奏・第二変奏・第三変奏……というふうに発展させていきます。
基本的な変奏曲では、シンプルな主題からはじまり、後半に向けて音楽も技巧的にも派手になっていく傾向にあります。
変奏曲形式で作られている楽曲は、モーツァルトの「きらきら星変奏曲」がとても有名ですね。
また変奏曲形式は、即興演奏の重要な手段でもあると言えるでしょう。
クラシック音楽の形式【まとめ】
いかがでしたか?
今回はクラシック音楽の形式について大まかに紹介しました。
作曲家の手によって自由に作られたように思える音楽も実は設計図があり、綿密に計算されてできているのですね。
そこからアレンジを加えオリジナリティを出し、その楽曲を「すばらしい!」と感じさせるのは、もちろん作曲家の力量によるものです。
このことがなんとなくでもわかっていれば、音楽鑑賞が楽しくなるだけではなく、自身の演奏や作曲にも深みが増してくるに違いありません。
クラシック音楽はもちろん、普段聴いている曲なども形式を意識しながら楽しく聴いてみてくださいね!