オーケストラピットの歴史について解説!当初は位置なんて決まっていなかった?
オーケストラピットという言葉をご存知でしょうか。
オーケストラピットとは、オペラやバレエを上演する際に観客席と舞台の間に設置され、オーケストラの団員と指揮者が入って演奏する場所(ピット)のことです。
略してオケピとも、またはオーケストラボックスとも呼ばれます。
今回は、オーケストラピットの誕生や、現在のスタイルに変化していく歴史についてご紹介します。
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オーケストラピットの歴史の原点は?
オペラが誕生したのは16世紀末、イタリアのフィレンツェであり、当初は貴族のサロンで演奏されていました。
劇場で上演される際には、オーケストラは書き割り(建物や風景の絵を描いた大道具のこと)の裏や、舞台の両脇などで演奏していました。
オーケストラの演奏場所が、しっかりと定まっていなかったようです。
1637年、ヴェネチアに聖カッシーノ劇場が建築されます。
入場料を払えば市民でも観劇できる世界初のオペラ専門劇場であり、この劇場の開館によってオペラは王侯貴族から一般市民の娯楽へと大きく変化しました。そして、この劇場で初めてオーケストラピットが舞台の前に設置されます。
これがオーケストラピットの誕生です。この頃から、舞台と客席の間でオーケストラが演奏するスタイルが定着しました。
オーケストラピット誕生後の歴史は?
舞台だけを見て指揮する指揮者
続いて、オーケストラピット誕生後の変遷を見ていきたいと思います。
1801年に開館したオーストリアのアン・デア・ウィーン劇場では、指揮者は舞台の真下で指揮していました。
つまり、客席から見るとオーケストラピットの一番奥で、団員に背を向けていたのです。
1801年の西洋音楽は丁度ロマン派初期ごろであり、ベートーヴェン、リスト、ワーグナーが活躍し始めた時期でもあります。
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そこからオーケストラの中央あたり、オーケストラに囲まれるようにして指揮するスタイルに変化し、そしてヴァイオリン奏者の辺りで演奏するスタイルに変わりました。
その後、この劇場で指揮者がオーケストラの前に立つ現在のスタイルになるのは、およそ1900年頃だったということです。
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舞台下に隠れたオーケストラピット
ドイツのバイロイト祝祭歌劇場は、作曲家リヒャルト・ワーグナーによって設計され、1876年に完成された小さな木造のオペラハウスです。
1876年はブラームスの交響曲一番が演奏された年でもあります。
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ワーグナーのオペラ作品を上演するために作られたこの劇場では、オーケストラピットは舞台下にすっぽりと隠されてしまいました。客席からは団員の姿が全く見えないのです。
世界的にも珍しく、「神秘の奈落」と呼ばれています。オーケストラの姿は見えないけれど、美しい生演奏が聴こえてくる様子はいかにも神秘的ですね。
現在のオーケストラピットは?
現在ではホールでオペラを上演する際、客席前方の床をセリのように下げ、座席を数列分撤去し、客席との間に小さな壁を立てることでオーケストラピットが設置されます。
固定式のオーケストラピットもあります。
まるで大きな穴ぐらのようで、客席からは団員の姿があまり見えません。
指揮者が大きく振る腕や手が少し見える程度です。オーケストラの音量が舞台上の歌手の声をかき消さず、また観客が演技に集中できるための工夫でもあるのです。
オーケストラピットの歴史は様々な形が試されて今に至る!
今回ご紹介した通り、オペラ誕生以降、さまざまな試行錯誤を経て現在のオーケストラピットの形に辿り着きました。
劇場やテレビでオペラやバレエの演奏を鑑賞される時は、ぜひオーケストラピットにも注目してみてください。
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